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著者からのメッセージ

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2010/6/11

Prof.Chihara.jpg社団法人化学情報協会 理事・相談役
理学博士・大阪大学名誉教授

千原秀昭 先生



千原先生はランドルト・ベルンシュタインを複数冊執筆されています。
最新刊 Nuclear Quadrupole Resonance Spectroscopy Data
(Group III : Condensed Matter, Volume 48 A, B )
ISBN 978-3-642-02891-5 (A) / 978-3-642-02942-4 (B)



【本書について】

■核四極共鳴スペクトル(NQRS)

 スピンが1以上の原子核は電気的な四極子をもっている。このような原子核は、置かれた場所(たとえば分子の中や結晶の中)に、外部にある電子や他の核がつくる電場の勾配によって、中心にある核スピンのエネルギー準位が分裂し、その分裂に適合する電磁波を共鳴吸収する。これが核四極共鳴(NQR)の現象で、非常に鋭い共鳴線を与えるので、有効数字7桁の精度の測定もできる場合がある。

スピンが相互作用する相手が電場の大きさでなく、電場の勾配の大きさなので注目する核の周囲の電荷の分布に極めて敏感である。 核が示す現象ではあるが、スペクトルが表しているのは、電荷の分布の様子なので、化学と材料物性の分野で利用可能である。2D, 14N, 35Cl, 17OなどNMRでは普通対象としない重要な元素も測定対象となる。

■物質と結晶多形の同定

 注目する核の周囲の電荷分布に敏感であるから、幸運な場合には、測定された1本のスペクトルの周波数が本書に掲載された周波数と一致すれば、物質も多形も確定することができる。本書オンライン版では周波数の検索が可能である。

■化学結合(量子化学)の分野での応用

 どんな化学結合をしているかによって、注目する核の位置に生じる電場の勾配は大きな影響を受けるので、NQRは結合研究の貴重なデータとなる。 NQRの計算をして実測値と比較すれば、分子の電子構造についてアブイニシオ計算に使った波動関数の近似の程度の検証になる。

■固体物性の研究への応用

 相転移を起こす固体の場合、NQRは核が置かれたサイトの対称に大きく依存するので、他の方法では検出できない相転移も測定可能となる。本書には高温超伝導も含め報告された相転移はすべて記録されている。サイト対称が球に近いとNQRは観測されないので、スペクトルに表れる共鳴周波数はサイト対称を直接反映するから、固体物性の研究に有力なデータである。特に最近は高温超伝導体に関する報告が多い。

NQRSデータベースについては http://www.jaici.or.jp/wcas/wcas_nqrs.htm まで。


【シュプリンガー・マテリアルズをおすすめします】

本書を含む膨大なデータ集ランドルト・ベルンシュタインは、その信頼性に大変定評があり、米国のNISTと双璧をなす科学者全体の資産といってもよい。

待望のオンライン版であるシュプリンガー・マテリアルズが公開されたことは朗報である。データの種別ごとに構成が違う冊子体を一つのデータベースシステムにまとめるのには非常な困難が伴うが、最初のリリースとしては、よくできた検索・表示機能を備えている。すなわち、物質、性質、その数値、文献、さらに測定条件や性質に関する解説も見ることができる。

少し馴れれば、アドバンス・サーチで、ほしい情報をしぼり出すことができる。物質に関するエントリー・ポイントが多様であることも特長であろう。冊子体の一覧表を見られるのも、これまでの蓄積の成果ということができる。

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